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ムシクイマスターへの道

[ 記事No.18531 ]
23件のコメント
ムシクイマスターへの道
 今月号のバーダー。
「ムシクイ特集」の記事を読まれた方も多いことと思います。
ムシクイについては画像からの識別が厄介なことも多く、私も常に頭を悩ませていますが、
目視よりも付近で鳴く個体や、継続した観察でほぼ種の特定はできるようになりました。
次に掲げる3枚の画像は比較的近くで撮影出来たものを2800サイズで切りだしたものです。
いずれも他の野鳥ですと図鑑に投稿しても良いと思うのですが、画像からはハッキリと種を説明できる要素に欠けることと、写真を見て誤解を招く恐れがあると思い投稿をしていない画像です。

今月号のバーダーを手にされた方は、記事を読み解きながら、思い思いのやり方で、これら3枚の画像のムシクイが何れに該当するのか考えてみてください。
なお、鳴き声がわからない状態(画像から)で種の特定がある程度可能なのは1枚のみだと思います。
画像1
画像2
画像3
こんばんは。
自分なりに考えてみました。書いてみたいと思います。

画像1 エゾムシクイ
・頭部の色が濃く、背中の色は薄い。頭部と背中の色のコントラストがある
・眉斑は太く長く明瞭。目より前の部分は黄色味がかる
・淡い翼帯が2本
・下面は白い
・足は薄いピンク色

画像2 センダイムシクイ
・上面は緑色味の強いオリーブ色
・この画像では分かりずらいが、頭央線があるように見える
・眉斑は黄白色で長く明瞭
・画像では翼帯が1本あるように見える
・下尾筒が黄色く見える
・下嘴は一様に橙黄色に見える
・過眼線が明瞭で、側頭線が暗色

画像3 メボソムシクイ上種
・上面は一様に緑褐色
・眉斑は細長く明瞭
・翼帯は画像では2本(1本はとても淡い)
・体下面は汚白色に見える
・下嘴は黄色で、先端部分に暗色を感じる

以上です。
アカヒゲさんのご見解も、遠慮なくぜひお聞かせ下さい。

TGMさん、こんにちは。
ズカンの中で多くの方に注目していただきたいのですが、ナカナカそうならないのが現実ですね。

ご推察、ほぼその通りだと思います。
バーダー今月号の特集記事にあわせて1種ずつ自分なりの見解を示していきますね。
 まず、ムシクイを知るうえでの基本中の基本。センダイムシクイ
(上に示した個体の別画像から説明してみます。)
①比較的大型で、動作もゆっくりなため観察し易い。
これって細部の形態についてではないのですが、ムシクイの中ででは確かにそのようにあてはまると思います。シジュウカラと比べて小ぶりではありますが、堂々とした体格です。(画像右下)

②頭上に明瞭な頭央線がある(ただし上側や後方から観察しないと見えないことも多い)。
センダイムシクイはよく頭央線があるか?翼帯は1本か?、
という点が取り沙汰されます。頭央線については、観察する方向(野外では双眼鏡で個体を追うことができれば)でほぼ確認が可能。
翼帯については、センダイムシクイでも他のムシクイ類同様フレッシュな個体では2本確認できます(画像左上)。
このため、今回のバーダー特集では翼帯の本数については触れられていないのではないかと思います。

③下嘴が橙色で暗色部がない。
これは、下から見ないとわからないのですが、センダイムシクイを同定する上での有力な手掛かり(下嘴に黒色部が入らないのはイイジマムシクイがいるが生息地が限定的なので、通常国内で見られるムシクイ類で下嘴が一様に橙色であればセンダイムシクイの可能性が高い)です。
ただし、いわゆる図鑑写真としてもう一つの特徴である頭央線は、1枚の画像で表現できないというのが難点ですね。
またこのように直射日光が当たる場合、本来の野鳥の色あいよりも茶色っぽく見えることもこの画像からわかります。(画像左下)

④体下面が白っぽく、尻から下尾筒にかけて黄色っぽいためコントラストがある。
画像右上にいわゆる図鑑写真として使えそうな全体画像貼っておきました。
この画像からは体下面は一様に白色に見えますが、下尾筒の黄色味は確認できません。またセンダイムシクイでは胸から下腹部にかけても黄色い部分が点在するので、真下から見れればその点にも気づくハズです。
画像右上が面白いと思ったのは、この1枚からは、頭央線、下嘴の色、下尾筒の黄色味などセンダイムシクイを外部形態から判断するうえでの確証が何ら得られないということです。(ただしムシクイをある程度見慣れたかたなら、センダイムシクイとわかると思います。)

⑤体上面は明るいオリーブ黄色。
先に示した画像や左上の画像から、センダイムシクイは明るい緑色であることがわかると思います。

⑥足は黄色褐色。
何れの画像からもわかりにくいのですが、下嘴の色とほぼ同じ色あいです。

⑦鳴き声は重要なのですが、画像からは説明できないので省きます。

⑧イイジマムシクイとの識別では、
 眼の周りのアイリングが目立てばイイジマの可能性あり。
 と思って観察するのがよろしいかと思ってます。

以上、グダグダと書いてみました。
また時間のあるときにエゾ(アムール)ムシクイ、メボソムシクイ上種について書きますね。
こんばんは。
センダイムシクイの見解、興味深く読ませて頂きました。今後のムシクイについても参考にさせて頂きますのでぜひお願いします。
アカヒゲさんにお聞きします。画像1はもしかしてアムールムシクイだったのでしょうか?それともう一つ、「鳴き声がわからない状態(画像から)で種の特定がある程度可能なのは1枚のみだと思います」とのことですが、アカヒゲさん的にどの個体を指しているのでしょうか?
TGMさん
画像1はおそらくエゾムシクイ、ただしアムールの可能性もあり。(鳴き声は両方付近でしてたため)
鳴き声がわからない状態で種の特定(画像のみ)ができるのは、センダイムシクイのみ。メボソムシクイ上3種については、3枚目画像の個体はコムシクイになりますがコチラは鳴き声による同定になります。

ムシクイに限ったことではありませんが、写した画像から種を特定する場合、それのみでは限界があること、鳴き声、季節、見た場所の環境、観察時の行動、などなど多くの方に識別の楽しみ方をこのズカンを通して知っていただきたいと思うのですが、ナカナカそれが難しい。

あとセンダイムシクイの説明で①~⑧にしめした識別時の注意点は、
バーダー今月号の特集記事に示された内容に自分なりのコメントを付記しています。
アカヒゲさん
さっそくのお返事ありがとうございます。
エゾとアムールが両方鳴いていたのですか!コムシクイも!改めて長崎がうらやましいです!
ムシクイは素早く動回るので観察するのが大変。見れたとしても一瞬だったり一部分だったりということが多々ありますが、根気強く観察していきたいと思います。
エゾ(アムール)ムシクイについて
バーダー2023年6月号のムシクイ特集でのエゾムシクイ説明書きでは、
①頭上が灰褐色。オリーブ褐色の背とコントラストがある。
②足が白っぽいピンク色。
③は鳴き声のためここでは割愛。
④尾羽を下げる動作をよくする。
⑤アムールムシクイとは外見だけで確実に識別できない。東シナ海、日本海沿岸の渡り時期はいずれも可能性があるため、地鳴きかさえずりを聞くことが確実。

一方アムールムシクイの説明書きでは
①~③は鳴き声による説明のため割愛。
④典型的な個体では、エゾと比べて頭上の灰色味が乏しく、上面がより一様に見える。
⑤初列風切の突出がエゾより短い傾向がある。

この両者を比べると、画像や見た目での野外識別は、エゾ(アムール)についても現段階では無理に等しいということがお判りいただけると思います。

 ただしこれには少し余談を加えさせていただきます。
バーダー誌2016年10月号の特集記事のなかでエゾ(アムール)の外見上の違いについて以下のことが述べられています。
・頭上と背の色調の違いは、両種とも個体差があり、年齢や羽の摩耗具合、光線の状態でも見え方が左右される。
・エゾムシクイでは初列風切の突出は長く、主に7~8枚。(中略)
 ただし両種とも6~7枚でオーバーラップが見られる。P5とP6の間隔はアムールに比べエゾが広め。
・アムールムシクイでは初列風切の突出は短く、主に5~6枚。エゾよりもP5とP6の間隔は狭く、P10ーPC長め。

と初列風切の特長を計測できれば種の区別はある程度可能という見解が書かれています。

何故今回の特集記事では、識別点に詳しい記述がないのでしょうか?

ここからは私の推測になりますが、エゾムシクイとアムールムシクイの違いについては血液(DNA)鑑定により別種(このことはメボソムシクイ上種も同じ)とした経緯があります。メボソムシクイ上種に対してエゾ(アムール)はまだ標識調査など細部の計測が行える場合は見分けが可能と思われていたようですが、種の特定を確かなものにするには血液採取が必要になっています。先ごろ、外部形態の計測並びに頭と背のカラーなどの特長からアムールムシクイとして放鳥されたものが、血液鑑定からエゾムシクイだと判定されたケースがあるそうです。両者の識別にはやはり現段階では、鳴き声とDNA調査以外、違いが明確にわからないという点を加味し最新のバーダー特集記事では両種の違いを文章としてとりあげていないのではないでしょうか?

 前置きが大変長くなってしまいましたが、冒頭の画像1枚目にある個体については多分エゾムシクイ(頭と背の色の違いが明瞭)としていますが、同一個体(掲載画像上側)とそれより以前2015年に撮影したエゾムシクイで間違いないと思う個体の比較写真です。

上段に貼った4枚の画像は撮影日2016年8月31日、このスレの冒頭に示した1枚目の画像と同一個体のものです。
一方下段は2015年4月24日に同じ場所で観察したものです。

風切羽の突出具合を見ると上段の個体が明らかに短いことがお判りいただけると思います。また翼の先端は上段の個体は尾羽には届かず上尾筒と尾羽の境目付近であるのに対して、下段の個体は翼の先端が尾羽にまで達していることがわかると思います。
 また下の個体に比べて、上の個体は体下面は白色というより若干バフ色味を帯びています(これは時期や年齢、換羽による違いの可能性あり)。

 では初列風切の突出が短ければアムール、長ければエゾと単純に大別しても良いのか?というとそうもなりません。

 これまでエゾムシクイとして過去に標識放鳥されたものの中には少なからずアムールムシクイが混じっている可能性があり、データとして確実性が若干失われている点。
 アムールムシクイとして最近放鳥されているものは、まだ数が少なくデータとしてのサンプルが少ない点。

 この双方から、両者についてはマダマダ謎の解明には至っていないということなのだと思います。

 では両者を野外で識別する方法は私達カメラマンでは無理なのか?
ということになってしまいそうですがさにあらず。

 それは鳴いている個体を動画撮影するということです。
 
 またグダグダと書いてしまいました。

いずれにしても、次期8版改定後に発売される図鑑においてムシクイ個々の説明書きがどのようになされるのかも楽しみです。
アカヒゲさん
こんばんは。またまた詳細な記述をありがとうございます。
とても興味深く読ませて頂きました。
僕が思っていること、率直に書かせて頂きますね。

エゾとアムール、外部形態は酷似し識別は困難という事なのですが、僕の中では現時点で、頭部と背のコントラストが強い個体はエゾで良いのではないかと思っていました。アカヒゲさんの画像1をエゾと判断したのもその点を一番に重視しました。アカヒゲさんもその部分をもって「おそらくエゾ」と書かれていることで、現時点では共通認識の確認ができたと思っていいでしょうか?

風切の突出の長さも気になるところですね。
まず下段の個体、特に左から2枚目の画像を確認しました。最長がP8とするとそこから数えて7~8枚突出しているように見えますし、P8から逆に数えていくとP5とP6の間隔が広いと感じます。これは典型的なエゾムシクイのものだと思いました。
しかし上段の個体は難しいです。確かに突出は短いですね。でも短かすぎないかとも感じます。この個体は風切を伸長中ということは無いでしょうか?仮にアムールムシクイだとしてもここまで短くは無いのでは?と率直に思いました。

ちなみに、BIRDER2011年3月号にはエゾの方がふしょが長めで太い、アムールは細いとの記述がありました。この識別ポイントは現在でも通用するのか、それとも通用しなくなったため今回のBIRDERには載らなくなったのかは分かりません。主観では2011年3月号の方が識別ポイントが多数出ていたり、識別早見表や翼式まで載っていて内容は濃かったと思っています。

最後に今後の参考にお聞きかせ下さい。画像1の個体を観察されたのは8月31日。秋の渡りということになるでしょうか。その時期の鳴き声は地鳴きだとすると、アムールの方がやはり高く聞こえるものでしょうか?
TGMさん、
お付き合いいただきありがとうございます。
エゾとアムールの違いについてですが、多分一番わかりやすいのはヤハリ頭部と背の色あいなのではないかと考えるのですが、アムールでも違いがあるようなので、見分けはかなり難しいのだと思います。
中国上海の(おそらくムシクイフリーク)の方があげているブログ紹介しておきますね(個人の記事なので鵜呑みには出来ないけど内容は信憑性があるように感じます)。本人はアメリカ人の研究者みたい。
https://www.shanghaibirding.com/tag/pale...
この方の記事を紐解くと
まず上海ではアムールが普通種でエゾが迷鳥にあたるということ。
その中で音声だけでなく、エゾの画像もキチンと明確にとらえているのが素晴らしい。
また、原文の和訳では
”アオアシムシクイ(アムールムシクイ)やトドカワムシクイ(エゾムシクイ)などのよく似た種を特定する場合、野鳥観察者は、写真は困難を切り開くのに何の役にも立たないことを理解する必要があります。音声録音だけが議論の余地のない記録と上海の種のより明確な全体像につながります。”
と言い切っています。

https://www.shanghaibirding.com/pale-sak...
コチラの記事では上海で見られる主なムシクイ5種、
・アムールムシクイ
・コムシクイ
・センダイムシクイ
・カラフトムシクイ
・キマユムシクイ

・エゾムシクイ
を追加で取り上げています。

その中でエゾとアムールの違いについて、
”スウェーデンの鳥類学者ペル・アルストロームは、この 2 つの種は「ほぼ同一」であり、「鳴き声以外は事実上区別がつかない」” ( Alström 2012)。”

”マークブラジル(Bird of Japan著者)は、野外識別において頭部の淡い灰色との区別には確信が持てない。光の当たり具合には特に注意が要。”(2009)

と述べていることが書かれています。

つまるところは、エゾとアムールについては、野外識別(見た目)での判断は極めて困難と私は結論付けています。
先にも述べましたが、写真のみある場合は、ほぼエゾとして識別。
アムールの声が聴けた場合(私の観察地でアムールが鳴く時期は必ずエゾもいる)でも、確実に鳴いている個体をとらえない場合はエゾかなぁ?とするのが妥当と考えています。

 私はこの7~8年の観察の中で囀っているアムールの姿を捕捉したのはたったの一度だけ(見つけた時は距離30mほど)。
 ついつい欲が出るものでその距離からの撮影は行わず、せめて20mまでは近づけたいと歩を進めてしまいました。ゆっくりカメラを構えると案の定飛ばれてしまいジ・エンド。粘れば再会できたのかもしれませんが、
「自ら飛ばしてしまった鳥はそれ以上追わない」を日頃から自分に言い聞かせてるので、それでよしとしています。
ただ、毎年鳴き声は確認できているので、いつか自分のご褒美として確実なアムールムシクイを撮影したいと思っています。(この思いが明日への活力につながります。)
以前作った、ショウもないものですが、よろしかったらご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=2zY-Xc0m...
私の場合、アムールムシクイに関してはこの記事のころと何ら進歩はない状況です。

2011年3月号のバーダー、ムシクイ特集は未だにムシクイ類を語る上で最強のツールだと思います。私自身今回の特集記事にはそれを超えるものを期待していましたが、結果は読んでの通りです。
 ただ、今回の特集では詳しく書きすぎることでかえって読者を迷わせる結果をさけているのではないかと感じています。
 例えばPCとP10についてですが、メボソムシクイ上3種でもオーバーラップが見られるため絶対ということはあてはまらない(屁理屈かもしれませんが)。エゾとアムールについてはアムールのほうがP10が長い傾向と言われていても。エゾが2.5~6㎜、アムールが2~6㎜と計測値をもってしても双方の区別はつかないというのが現状なのだと思います(おそらく種を取り違えて記録されたものが含まれるためこのような結果になっているのではないでしょうか)。

今回のムシクイ特集にかんしては、10数年前の記事に比べ確かに内容は薄く感じますが、専門的な用語も極力省き、一人でも多くの人にムシクイに関心をもってほしいとの編集者の意図、それをふまえて必要にして最小限の情報をで簡潔にまとめて下さった執筆者に感謝したいと感じています。

秋の渡りでもたまに囀ることはあります。
この日は私はエゾにしては高い声を聞いて疑問に思っていると、たまたま観察に来ていた師匠がアムールはわずかだが囀りもあったとおっしゃっていました。(残念ながらこの日の録音はナシ)

ただし、同時に聞けるとその違いにも気づくのですが、ヤハリ録音後自宅に帰ってからソノグラムにしてみないと両者の違いを確実に示すことは今の私にはできません。

最後に春の渡り、私や同じ日に同じ場所で観察したムシクイフリークの方々数名で「こいつはアムールやろう」と見た個体の写真貼っておきますね。
研究者にもお尋ねしましたが当然のことながら
「わからない」というお返事でした。

またしてもグダグダと書いてしまいました。
メボソムシクイ上3種についてはまた後日書きますね。
冒頭に用いたコムシクイと同一個体の画像(添付画像)が、
Strix Vol.39号
https://www.wbsj.org/activity/conservati...
に掲載されました。
2016年から取り組んでいる、ムシクイ調査がひとつ身を結んでホッとしているところです。
何事も継続は力なりですね。
アカヒゲさん
今回も詳細な記述で、大変勉強になります。
なんとか外部形態で分かるすべはないものだろうかとの思いは強いのですが、やはり鳴き声より無いのですね。
アカヒゲさんの言われる、「写真のみある場合は、ほぼエゾとして識別。
アムールの声が聴けた場合(私の観察地でアムールが鳴く時期は必ずエゾもいる)でも、確実に鳴いている個体をとらえない場合はエゾかなぁ?とするのが妥当と考えています」という部分、もっともだと思いました。
youtubeの音声動画は、今回ご紹介いただく前から見させて頂いていました。
最後の添付画像は、鳴き声は確認できなかったんですね。でもいつの日か、アカヒゲさんがアムールムシクイを写真に収める日が来ることを期待しています。

メボソムシクイ上種も、また読ませて頂きますね。
メボソムシクイ上3種について、

 バーダーのムシクイ特集については、今回のもの(2023年6月号)よりも、10年以上前に掲載された2011年3月号のほうが、読み応えも見ごたえもあったと感じている人が多いことと存じます。

 ただしよく本文を読んでみてください(お手元に雑誌を持っている方に限られますが)。

 見られる時期について前回の特集では春、秋の渡り期、繁殖期で見られる地域の表記しかありませんが、今回の特集では特に渡り期については月毎に詳しく解説されています。渡り期の野鳥を追いかけている私にとっては大変ありがたいことで、またメボソムシクイ上3種の渡来時期を過去5年間私が観察してきたものとほぼ一致する点は大変うれしく感じました。

 まずバーダー2023年ムシクイ特集でのメボソムシクイ系の渡り期の飛来時期は、
・メボソムシクイ(バーダー記事)→4月下旬~5月中旬  9月上旬~中旬
  下段は私の長崎市での観察→4月下旬~5月中旬  9月中旬~10月初旬

・オオムシクイ(バーダー記事)→5月中旬~6月初旬  9月中旬~11月上旬
 下段は私の長崎市での観察→5月中旬~6月中旬 10月上旬~11月上旬

・コムシクイ(Strix Vol.39号) →5月中旬~下旬   8月下旬~10月中旬
 下段は私の長崎市での観察→4月下旬~5月中旬 8月下旬~10月上旬

 メボソとオオムシクイの渡り期についてはバーダー特集の記載と春はほぼ一致。秋は北から移動してくる時期を考えると初認が若干遅れる点もうなずけます。
 コムシクイについてはバーダーでの飛来時期はありませんが、私の観察記録も含め、Strix Vol.39号に掲載されているデータからですが福岡・長崎・鹿児島でのコムシクイの渡りの記録からのデータです。コムシクイについての春の渡り期は私の観察ではメボソムシクイとオオムシクイの飛来期におそらくそうであろうという声を確認した時期から書いていますが、数も限定的で確実にコムシクイとする音源を持ち合わせていないのが現状で、4月下旬の飛来については今後確実な記録となるよう努めていければと思っています。

 この中で注目すべきは、8月下旬に繁殖地以外でメボソムシクイ系に出会ったらコムシクイの可能性が高いと言えることがうかがい知れます。
 またメボソムシクイ系の渡りでは、春は5月上旬~中旬、秋は9月中旬~10月上旬がピークにあたることもうかがい知れると思います。

写真で示した色は
・黄色(確認できるが数は少ない)
・オレンジ(市内随所で確認できる)
・赤色(群単位で沢山いる)
となります。

メボソムシクイ系の外部識別については、今のところPCとP10の長さの違いが唯一有効な方法とされていますが、中間に位置するオオムシクイはどちらにもとれる個体が存在し、正確には鳴き声による判断となるのが実情なようです。
 色味については、観察者(私)の感覚的なところもありますが、私の経験上では、
メボソムシクイが最も緑色味が強く、以下オオムシクイ、コムシクイと若干色が淡くなるようには感じますが、画像では周囲の色や光線具合によってこの3種を区別するのは不可能だと思っています。

 日本各地で繁殖するメボソムシクイについては、繁殖地が1500m以上の常緑針葉樹林帯になります。渡り経路については未だよくわかっていないのが現状です(過去に発表された論文では少なくともオオムシクイが多数含まれている)。私が観察している長崎市においては、この3種のムシクイの中では最も数が少ないように感じます。(群れで観察したことがない。)

通常、渡り期に低山帯の公園などで見かけるものは個体数からいくとオオムシクイの可能性が最も高いといえます。詳しい渡り経路は不明ですが、知床半島など日本の最北端が繁殖地の南限にあたり、日本列島各地を通過しているものと考えています。春は5月下旬~6月上旬、秋は10月以降に見られる個体はほぼオオムシクイと考えていいと思います。

コムシクイについては、九州各地(渡り期)や南西諸島(越冬期)では比較的見る機会が増えてきているようですが、その他の地域での観察例はあまりないようで、大陸を中心に渡っているのだと思います。(タカで言えばアカハラダカが本州では殆ど見られないのと同じかなぁ?)

 ちなみにバーダー2023年6月号では、ムシクイ類の飛来時期について、
・センダイムシクイ→春4月上旬~   秋7月下旬
・エゾムシクイ   →春4月上旬~   秋8月上旬
・イイジマムシクイ→春3月下旬~4月中旬 秋8月下旬~9月上旬

となっており、この点も私の長崎市での観察記録に通じるものがあります。

 またまた長々と書いてしまいましたが、皆さまのお住まいの地域でのムシクイ探しの一助になれば嬉しく思います。
 2~3日前から怪しい声を聞いていたのですが、探鳥の時間がとれず保留。
 本日(8月29日)、自宅裏山にてコムシクイの地鳴き予定通り確認しました。
 姿は見えずですが、録音もできて一段落。
 幹線道路沿いでの録音で、車のノイズなどでスペクトラムによる周波帯域は5kHzから7.5kHz、問題なくコムシクイだと思います。録音時は地鳴きでしたが、初めて確認した時はグゼるように小さな声で囀ってたのでソチラが録音できなかったのがちと残念。
こんばんは。

下の画像は本日、山口県長門市で撮影したものです。まず、頭央線がないムシクイ類を発見。そこで、できるだけ詳細に観察したところ、次のようなヒントが得られました。
・ウグイスの地鳴きを低くして濁らせたような声(ジュッ、ジュッのような感じ)
・頭や背中に少し黄色味がある
という点から、メボソムシクイなのではないかと思っていますが、どうでしょうか。ご確認をお願いします。
 みそっちサン 貴重な観察記録ありがとうございます。
 メボソムシクイの地鳴きについては、大方そのような感じです。
 写された画像はメボソムシクイ系だということが外部の特長からわかります。観察された時期と地域からも、種メボソムシクイ(学名:Phylloscopus xanthodryas)の可能性が高いと思います。

 ただ、こればかりは鳴いている動画を撮るか、レコーダーで撮影と同時に録音しないことには種としての根拠づけが難しいというのが渡り期のメボソムシクイ系ということになります。

 ちなみにメボソムシクイと外部でわかる写真はコチラ
https://zukan.com/jbirds/leaf93774
(コメント欄に解説と関係記事へのリンクがあります。)
アカヒゲさん、ご確認ありがとうございます。
地鳴きも聞けたので、メボソムシクイだとしたいと思います。それにしても、声が聞けなかった場合は識別は不可能と言っていいですね。私の場合、録音はしていないので、耳で聞いた感覚が頼りになります。

それから、調べていて出てきたPCとP10の差というのはよく意味が分からなかった(というかどれがPCでどれがP10なのかわかりませんでした)のですが、添付していただいたリンクの写真ではとてもよく見えました。私もそのような写真が撮ってみたいものです。

また厄介なムシクイ類が撮れたときには宜しくお願いします。
2024年の春の渡りでの観察にて。
バンダーさんのお手伝いをしてわかったこと。
エゾムシクイとアムールムシクイについては、各部の計測値も重複する部分が多く、両種の違いについては鳴き声とDNA鑑定以外違いは見いだせないというのが現状です。
記録をするうえでは、録音が必須です。
また鳴いている個体を動画に残すというのが最も確実な記録方法になると思います。
ムシクイに関心のある方へ

ステップ1
ウグイスとムシクイの見分けが出来るようになる。

ステップ2
日本で見られる基本3種
センダイムシクイ、メボソムシクイ、エゾムシクイの鳴き声を憶える。

ステップ3
野外では鳴き声をたよりに、観察できたムシクイの行動、時期、場所、印象に残ったことなど記録に残しておく。
記録は、メモ、写真、録音、動画など

ステップ4
ステップ2で書いたセンダイムシクイ、エゾムシクイ(アムール含む)、メボソムシクイ上3種(オオムシクイ、コムシクイ、メボソムシクイ)の3種を見分けられるようになる。

それから先は、徐々に鳴き声から観察できたムシクイ類の数を増やしていく。
2024年6月現在、私がこれまで観察できたムシクイ類のリストは
・センダイムシクイ
・エゾムシクイ
・アムールムシクイ
・コムシクイ
・オオムシクイ
・メボソムシクイ
・イイジマムシクイ
・キタヤナギムシクイ?
(声と目視のみ、写真や録音といった証拠なし)
・チフチャフ
・ムジセッカ
・カラフトムジセッカ
・カラフトムシクイ
(録音も写真もデータはなし)
・キマユムシクイ
・非公開1種

以上記録やデータはなく、現地での確認のみのものも含めて14種。

2024年の春は、5月中旬に念願のコムシクイの囀りを録音できたのが嬉しかったです。
9月29日、山口県長門市で下の写真のムシクイ類を観察しました。
写真をよく見て、というよりもう直感的にメボソムシクイ上種とわかりました。いつか鳴いてくれないかと思って待っていたら、連続して鳴いてくれた時があったので声を録音しました。帰ってみて聞いたところ、耳で聞いた範囲ではオオムシクイではないかと思いましたが、アカヒゲさんがしているような声紋分析は一般人にできるものでしょうか?
専用の機械などを買う必要があるならそこまで正確にしようとは思っていないので耳で聞いた判断にしようと思います。
みそっちサン、
https://ornithology.jp/katsudo/Letter/no...
コチラが声紋分析には参考になるかと。

それから、秋のムシクイは姿が見えているときは鳴いてないことが多いですが(向こうもコッチに気付いてる)、初めから付近の鳴き声に気を付けていれば結構鳴いてますので注意してみてください。
 撮影された画像の質問には「鳴かなかった」との記事をよく見ますが、撮影中の個体が鳴いてないだけで、見えてないときは必ずと言ってイイほど鳴いています。
アカヒゲさん
参考になるものをありがとうございます。添付いただいたものの中で「RavenLite」を使おうと思います。しばらくこれについて手が付けられなさそうなので結果が出たらお知らせします。
上のムシクイの声紋分析がやっとできました。結果が下の写真です。鹿苑寺は一羽だと思っていたのですが、分析を見ると二羽の声が混じっていたようです。
一羽目(赤丸)は5.5kHz~8.0kHz程で範囲的にはオオムシクイかコムシクイですが、「ジジッ」と二音節になっている感じがなく、実際の声を聴くとちょっと濁った「チッ」(表現が難しい)のような声なのでコムシクイではないかと思います。
二羽目(青丸)は5.0kHz~7.0kHzほどでこちらもオオムシクイとコムシクイの範囲ですが、こちらも二音節になっているようには見えず、実際の声も軽い「チッ」という感じなのでコムシクイではないかと思います。

以上の点について間違いがあればご指摘お願いします。なければ鳥の画像とこの声紋画像を後日コムシクイとして投稿しようと思います。
みそっちサン、
 実際に音声を確認していないので声紋だけで青で囲んだ鳥と赤で囲んだ鳥が2羽なのか?、はたまた1羽の野鳥が発しているものなのかを私には判断出来ません。また私はホオジロ類の野鳥の地鳴きを「チッ」と認識しているため、
コムシクイの声は「ヴィッ」(セキレイ類の地鳴きに近い)と聞こえ、オオムシクイは「ジッ ジジ」(ホオジロ地鳴き「チッ チチ」にどことなく似ている)、メボソムシクイは「ジェッ」(濁りが強い)みたいに聞こえます。

私にはこの声紋から種の同定を確証づける根拠を見いだせないという所です。
Ebirdでは、
オオムシクイ、コムシクイともに9月~11月の地鳴きをソノグラムと連動して聞くことが出来ますのでみそっちサンが録音されたデータと繰り返し聴き比べてみては如何でしょうか?

また、1例(1回)の観察でコムシクイと結論づけるのはあまりにも危険と思います。先にも述べましたが、私の知る限りでは山口県(瀬戸内側)でのコムシクイの観察事例はなく、仮にコムシクイの可能性を示唆する音声データでしたら然るべき研究機関を通じての検証が必要になると感じます。
 
 これは私のこれまでの観察によるものでの自己判断になりますが、
①コムシクイの画像については鳴き声の録音から間違いないと判断しているものを9月に毎年のように確認撮影しているが、画像はかえってご覧になる方の誤認に繋がりかねないことから投稿を控えている。
②音声データの声紋を投稿しているのは、コムシクイを確認するには画像では表現できない部分が多く、皆さんに鳴き声(録音)にも興味を持ってほしいので一例を投稿しておりましたが、周波帯域においてオオムシクイとは似通った部分があり、これも誤解を招くような可能性があると感じました。

このズカンにおいてソノグラムの紹介はフーリートークコーナーでの話題はあっても、投稿画像欄への掲載はふさわしくないと思いましたので削除することとします。(Ebirdのように音声データは流せないので)

追伸:
つたない個人的探求のスレに関心を示して頂き、みそっちサンには感謝申し上げます。これは学術的研究をなさっている方に言われてきていることでもあるのですが、渡り期(特に5月と9月)において各地で見られる
①メボソムシクイ上3種とエゾムシクイとアムールムシクイについては画像による識別は無理。
②鳴き声の録音では識別可能だが、鳴いている個体を確実にするには、双方のデータが得られる動画撮影が必要。

以上2点から、「日本の野鳥識別図鑑」では動画及び音声データを取り扱っていない以上、立証するには観察者の判断に委ねる以外、第3者が判断するのは不可能に近いことをご理解いただけると有り難いです。

ただし、繁殖期のメボソムシクイ、オオムシクイ、エゾムシクイについては国内でも観察地から特定できると思います。
アカヒゲさん
そうですね、この「日本の野鳥識別図鑑」では画像しか扱っていないため厳密な判断をするのは難しそうです。私は別に研究者ではないので、コムシクイの可能性が高そうというところまで分かっただけでも満足です。
上のコメントでは「チッ」と書きましたが鳴き声をカタカナにすること自体が難しいので、伝わり方が違ってしまったかもしれません。正確には「チッ」よりも少し濁りのあるような声です。

次メボソムシクイ上種に出くわしたら、姿と声が両方は行っているような動画を撮ることに挑戦してみたいと思います。
また今後の目標ができました。ありがとうございます。
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