形態・特徴 | 体の背面に明瞭な黒点がなく、尾鰭に銀白色の放射状線があるのが特徴である。海洋生活を送っているときは背部は青黒色であり、産卵のため河川に溯上する際に、鶯色地に黒いまだら模様が入るような婚姻色に変わる。雄は両顎が曲がって「鼻曲がり」と呼ばれる状態となり、これで雌をめぐって雄同士が噛み合ったりすることもある。
サケは自分の生まれた川へ産卵溯上をする。この現象は母川回帰という言葉で広く知られている。サケは自分の生まれ故郷の川独特の“匂い”を産卵の段階まで覚えており、この記憶に従って母川回帰できるということが研究によって明らかにされている。但し、稀に近くの別の川に間違ってしまう個体もいるという。 |
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分布 | 日本海、オホーツク海、ベーリング海、北太平洋の全域。秋に川で産まれ、春に降海し、4年ほど海で過ごして母川に産卵回帰する。 |
生息環境 | 北部太平洋域を大回遊することが知られている。日本では北海道および島根・茨城以北の本州の河川で産まれる。産卵期は9~1月で、稚魚は2~5月に海へ降下する。降下すると日本海、オホーツク海、北太平洋、ベーリング海、アラスカ湾といった水温の低い海域を回遊する。 |
食性 | 動物食性で、小魚などを食べる。産卵のため河川を溯上する際には餌は一切とらず、産卵を終えると死ぬ。 |
地方名 | アギアジ(青森県、山形県)、トキ(青森県、石川県能登町)、シロ・アキアジ・アギアズ・ブナ・ギン・ギンケ・ベニザケ・トキシラズ・トキシラジズ・ハママガリ・オオスケ(青森県)、ヨノゴ・ヨノグ(幼魚、青森県)、サゲ(青森県津軽、山形県)、オ(青森県津軽)、シャゲ・サゲノオ・サゲノヨ・ドンベ(青森県南部地方)、サケノヨ(秋田県にかほ市、福島県双葉町、茨城県ひたちなか市)、オオメ・オオメマス(宮城県)、イヌマス・オオスミ(宮城県石巻市)、オオマナコ・ラシャマス(宮城県塩釜市)、サケノオ(宮城県気仙沼市・仙台市、富山県)、イオ・ヨオ・ヨ(山形県)、サケノ(富山県魚津市)、サケノイオ(富山県氷見市) |
その他 | サケという標準和名は他のサケ科魚類と混同されることもあるため、本種を「シロザケ」と呼ぶ場合もある。
イクラや筋子、塩鮭、新巻鮭など、サケと日本人の食生活との関係は不可分であるといえよう。特に、秋季に漁獲され産卵に加わらない若い個体の「鮭児」や、春季から夏季に漁獲される産卵に関与しない「時不知」は珍重されている。このように、サケは日本では文化上、そして水産上も重要な資源である。このため、水産資源保護法などで厳しく管理されており、特に河川では本種の採捕が禁止されており、特別な許可を得ないと採捕することはできない。また、河川河口域周辺でも厳しい制限が掛かっている。しかし、河川河口域から離れた海域では規制はなく、遊漁、漁業ともに喧嘩沙汰になることもあるほどに盛んである。 増殖および種苗生産、放流事業も盛んで、研究者からは遺伝的多様性へ悪影響が出ることを懸念されている。サケは海から陸域へ有機物を運ぶため、生態系の物質循環を考える上でとても重要な種であることが研究の結果明らかになっており、河口域で採卵・採精のために一網打尽にしてしまう事業へも批判が湧いている。 様々な国の水域を広く利用するサケの資源利用を持続可能な形で管理していくため、関係諸国(日本、韓国、ロシア、カナダ、アメリカ合衆国)では「北太平洋における溯河性魚類の系群の保存のための条約(NPAFC条約)」に加盟し、包括的な保全への取り組みを目指して努力している。 |
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