形態・特徴 | 頭部が縦扁し、その背面は平たい。口が小さく、側線はない。雄は背鰭と臀鰭の外縁に欠刻があるが、雌にはない。カダヤシに似ているが、本種は背中線上に暗褐色の縦条があること、臀鰭基底が長いこと、尾鰭外縁は直線的で丸みを帯びないことなどで区別することができる。 |
---|---|
分布 | 本州~沖縄島。朝鮮半島、中国中部~南部、台湾。平野部の池沼、水田、細流などにすむ。メダカは1種とされているが、アイソザイムやミトコンドリアDNAの遺伝学的な研究から、地理的な分化が認められる。大きく分けて北日本集団、南日本集団、東韓集団、中国~西韓集団の4つになり、飼育下では、それぞれ交配可能であって生殖的隔離は認められないのだが、その遺伝的な差異はそれぞれ亜種と見なしていいほど分化している。また南日本集団は、東日本型、山陰型、東瀬戸内型、西瀬戸内型、北部九州型、有明型、薩摩型、大隅型、琉球型の、九つの地域集団に分けられる。保護のための放流を美談とされることも多いが、メダカの地域個体群は、遺伝的な独自性を持つことが多いので、放流・導入に際しては保全生物学的な知見を活かす努力が求められる。 |
生息環境 | 平野部の池沼、水田、細流といった水田地帯に生息するが、河川やその河口、さらには沿岸域に生息する個体群も知られている。 |
食性 | 昆虫類を主に食べる動物食性。 |
地方名 | かつては4000を超える地方名があったといわれているが、メダカそのものの急速な減少とともに多様性のある地方名も消えつつある。2021年11月、Facebookグループ『WEB魚図鑑の部屋』で地方名を募ったところ、ほぼ全国的に「メダカ」と呼ばれていることがわかった。その際、収集できた地方名を以下にまとめる。
ウルメ(新潟県見附市)、メッタン・メットウ(和歌山県)、ネビチャ・ネビチャンゴ(鳥取県)、タカマメチン(鹿児島県)、タカメンチョロ(鹿児島県薩摩川内市)、タカマーミ(沖縄県那覇市) ※メダカと呼んでいることが確認された地域 青森県、千葉県、東京都、長野県松本市、岐阜県美濃地方、三重県南伊勢町、滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県和歌山市、兵庫県、島根県松江市、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、鹿児島県 |
その他 | 1999年に環境省が発表した改訂版レッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物を掲載したリスト)にて絶滅危惧II類として本種が取り上げられたことが新聞やテレビなどのメディアで話題となった。かつて身近だった生物の絶滅が心配されるようになったという事実を象徴する生物として本種メダカが代表的に挙げられたのだった。本種の絶滅が危惧されるようになった背景には、圃場整備事業による水路の分断化やコンクリート化による影響、カダヤシやオオクチバスを始めたとした外来魚の影響、品種改良された“ヒメダカ”や“シロメダカ”などや、また地域個体群とは無関係の個体群由来のメダカの無秩序な放流による影響などが主な要因として挙げられている。つまり、人為的な環境改変・外来魚問題・遺伝子汚染というように、その多様性の減少の要因が多岐に渡っている状況にある。
本種の地方名は全国で4,794にも上り、また観賞魚としても日本人の間では“キンギョ”や“ニシキゴイ”が流通し始める以前の昔から親しまれてきた歴史的事実が物語るとおり、日本の原風景と本種は不可分の関係にあるといえるだろう。ラテン語で表記されている本種の学名(のうち属名)は稲(イネ)に由来するものが当てられており、日本の文化を語る上で欠かせない、そしてこれからも食糧自給の面から見ても重要な稲作文化を再度見直す時期がきていることを告げているのかもしれない。 |
食味レビュー |
食味レビューを見る 食味レビューを投稿する |