アイゴ

Siganus fuscescens (Houttuyn, 1782)

形態・特徴 体色は淡色から灰褐色、または暗色で、白色斑がある。色や白色斑は、その時の状態によって、出たり消えたりする。腹鰭の形状が特殊で、1棘、3軟条、1棘である。背鰭は13棘10軟条、臀鰭は7棘9軟条。アイゴ科魚類の背鰭・腹鰭・臀鰭の鰭条数はみな同じである。胸鰭は16-17軟条。背鰭・腹鰭・臀鰭の棘(計24本)には毒があり、刺されると危険である。
分布 山陰・下北半島以南、琉球列島(シモフリアイゴ型が多い)。台湾、フィリピン、西オーストラリア。岩礁域の藻場にすむ。
生息環境 アイゴの仲間は熱帯域に生息するものがほとんどであるが、本種は温帯海域にもよく出現する。主に岩礁域や藻場に生息し、琉球列島においては河川の汽水域に出現することもある。幼魚は流れ藻にもつく。
食性 雑食性で、甲殻類や各種付着動物などの動物類も食うが、藻類をよく捕食する。釣りの餌としてははオキアミのほか、酒粕を練ったものを使うこともある。
地方名 標準和名であるアイゴの語源として、アイヌ語でイラクサ(トゲがある)や、先端の鋭利な矢を指す「アイ」という言葉があり、それに接尾語としての「ゴ」がついたものという説がある。一方で、独特の匂いとの関連からバリ(尿=いばり)という、系統の異なりそうな呼び名もあり、ここでは地域別というよりも、呼び名をアイ・ヤー系、バリ系、その混交、およびその他に分けてみた。
【アイ・ヤー系】アイ(大阪府、和歌山県、山口県東和町、徳島県鳴門市)、アエ(高知県)、アワ(山口県)、アイコ(石川県能登)、アイタロウ(島根県江津市、山口県下関市)、アイハゲ(高知県西部・愛媛県)、アイバチ(山口県山口市)、アーノイオ(鹿児島県種子島)、エイノウオ(静岡県伊豆)、エイノイオ(鹿児島県屋久島)、エィヌィユー・エヌイュ(鹿児島県奄美)、マーエー・エーグヮー(沖縄県)、イエー(沖縄県久米島町)、ヤー(佐賀県武雄・有田周辺、長崎県)、ヤーノイオ・ヤノイオ・ヤノウオ(長崎県、熊本県)、ヤ(長崎県諫早市・雲仙市) 【バリ系】バリ(千葉県、静岡県伊豆、三重県、福井県、大阪府、和歌山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県(奄美含む))、ヨツバリ(東京都小笠原諸島・伊豆諸島新島村)、ウラバリ(兵庫県但馬)、バリタレ(山口県)、イバリ(福岡県) 【アイ+バリ系】アイノバリ(三重県尾鷲市、和歌山県、徳島県、宮崎県門川町)、アイノバル(宮崎県門川町)、アイバリ(長崎県対馬市)、エイバリ(長崎県対馬市・壱岐市)、ヤアバリ(長崎県対馬市)、ヤーバリ(長崎県五島) 【その他】ネションベン(茨城県大洗町、静岡県伊豆)、ネコマタギ(静岡県駿河湾、福岡県、佐賀県)、ションベン・ションベンタレ(静岡県伊豆)、イタタ(富山県射水市)、イタイタ(富山県氷見市)、イタダイ(富山県富山市)、シイノハ(福井県敦賀市、京都府丹後)、シバノハ(京都府丹後、兵庫県但馬)、カラクチ(京都府丹後)、ハラクチ(京都府丹後、鳥取県米子市・境港市、島根県美保関町)、シブカミ(和歌山県)、ハリタテ(兵庫県但馬、島根県)、ギィ・バリカン・カキノハ・ニブゴリン・タバコヨ・ハリ(兵庫県但馬)、ハラブク(島根県松江市)オイシャ・モクラエ(山口県)、ショオベンウオ(熊本県)、カイモンイオ(鹿児島県)、エノシバ(鹿児島県薩摩川内市)、エノハ(鹿児島県串木野市 )、エノケン(鹿児島県南さつま市野間池)、マテー(鹿児島県喜界島)、モーハニ(鹿児島県沖永良部島)、アカガンチェー(沖縄県糸満市)、カンチエー(沖縄県国頭村)、ウキャイ(沖縄県宮古島市狩俣・伊良部) 【出世名として】大阪府: バリコ→バリ・アイゴ・アイ 和歌山県: バリコ→アイ・アイノバリ・バリ・シブカミ 徳島県鳴門市:当歳魚はバリゴ(アイゴ)→2歳魚はアイ 福岡県:バンチャゴ→バリ 大分県:エンバリ→バリ 鹿児島県沖永良部島:ツクヌクワ→モーハニ 沖縄県:スク→エーグヮー
参考:https://gyomei.zukan.com/?p=1577393263
その他 従来、琉球列島にすみ、白色斑が細かいものについてはシモフリアイゴSiganus canaliculatusと呼んでいたが、琉球列島のシモフリアイゴと本州~九州のアイゴについては遺伝学的に同種であることがわかり、アイゴの別型(シモフリアイゴ型)とされた。
また、Siganus canaliculatusと、かつてシモフリアイゴと呼ばれていたものは別種と考えられた。
産卵期は7月ごろで沈性の粘着卵を産む。釣りの対象魚として有名であるものの、関東ではあまり喜ばれない。口が小さいのみならず、伸出できないので、針掛かりしにくい魚でもある。成魚は干物、塩焼き、煮付けなどで美味。ただし、先述したように各鰭棘に毒があるので、十分に気をつけること。刺された場合はタンパク質毒素なので、やっと我慢できる温度のお湯が有効。
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