ニホンウナギ

Anguilla japonica Temminck and Schlegel, 1847

形態・特徴 産卵場はマリアナ諸島西部海域であるとされ、孵化した仔魚は黒潮に乗って日本列島までやってくる。この仔魚は黒潮に乗りやすい形をしており、その形から葉形幼生(レプトケファルス、レプトセファルス;Leptocephalus)と呼ばれる。その後、日本近海でシラスウナギとなる段階でいったん縮んで細長くなり、成魚と同じ形となる。シラスウナギはやがて黒ずんでいき、見慣れた黒くて細長いヌメヌメした魚へと成長していく。ウナギ科の魚は下顎が上顎よりも突出するという特徴があり、他の科に分類されるウナギ目の魚類とほぼ区別することができる。ウナギ科は日本では主に2種を産するが、本種の体色は背面が黒色で腹面が白色であり、まだら状の斑紋がないことなどで、主要なもう1種のオオウナギと区別することができる。血清には毒を有し、そのため生食もされず、手に傷がある状態で捌くことは敬遠されるが、65℃以上の熱で毒性はなくなるため、蒲焼の状態になると毒は無くなっている。
また、ウナギとよく似た、大西洋が原産のヨーロッパウナギ Anguilla anguilla とアメリカウナギ Anguilla rostrata が放流されている場所もあり、問題となっている(特にヨーロッパウナギが多いようである)。
分布 北海道以南の日本各地。朝鮮半島、中国、台湾。河川の中・下流域、河口域、湖沼。近年海でのみ生活するものも多いのではないかと考えられている。
生息環境 黒潮に乗ってきたシラスウナギは以下の3パターンの生活様式に移っていくという仮説がある。
①河川を溯上し、河川の下流域から源流域や河川と繋がりのある池や湖沼まで辿り着き、岩の隙間などの身を潜められる場所に定着する。
②海水と河川水との交じり合う汽水域にある隠れ場所に定着し、汽水域に居続ける。
③河川へは入らず、海域で一生を過ごす。
この上記のうち、②と③に関する知見は乏しく、我々がよく知っているのは①のウナギたちである。産卵のメカニズムはよくわかっていないが、淡水域、汽水域、海域という生活場所の違いこそあれ、フィリピン海プレート東端の深海底を南下して、マリアナ諸島西部海域の海山に集まって新月の5~6月頃に行うという説が有力のようである。
食性 葉形幼生(レプトケファルス)の時は、ウナギ目魚類の多くは尾虫類のハウス及び、尾虫類の糞粒を食べることが知られているが、ウナギの餌はどうなのであろうか。水産試験場では葉形幼生の餌は、絶滅が危惧されているアブラツノザメの卵が専ら用いられているが、他に健全に育てられる有効な餌が見当たらない状況にあるという。葉形幼生からシラスウナギに変態した頃からの餌はよく知られている。ユスリカやミミズなどを食べる動物食性となり、成魚になると小魚やカエルといったものまでも食べるようになる。生物の死体も食べ、掃除屋(スキャベンジャー)としての役割も果たす。釣りで有名な餌となるのはドバミミズと呼ばれる大きなミミズであろうか。
地方名 マウナギ(鹿児島県屋久島)、ンチャウナギ(沖縄県)、ガニクイ(山口県厚狭郡吉部)、ムナギ(高知県南国市、地方名といえるかは不明)、マムシ(地域不明)、稚魚:シラスウナギ(香川県、愛媛県宇和島市、熊本県水俣市)、若魚:クロコ(熊本県水俣市)、イトスベ(地域不明)
その他 料理方法やその味については最早ここで言及するまでもないが、日本は世界でもウナギの消費量が特に高く(世界の約70%を消費しているという)、ヨーロッパウナギ Anguilla anguilla やアメリカウナギ Anguilla rostrata の輸入量も世界最多である。しかし、ウナギもヨーロッパウナギもアメリカウナギも、需要は世界的に(特に日本)で上昇しているにも関わらず、資源量は急減しており、絶滅が危惧され始めている。そのため、ヨーロッパウナギをワシントン条約へ指定しようとする動きや、アメリカウナギを絶滅危惧種に指定しようとする動きが近年拡大しており、輸入が制限されようとしている。また、日本でもウナギの絶滅危惧種への指定が秒読みになっているような状況である。これは、ウナギの完全養殖が近年まで技術の確立すらなされていなかったことに起因する。つまり、養鰻はシラスウナギを天然海域・汽水域から多量に採捕し、畜養する形式に頼っているためであり、現在でも養殖技術として費用対利益の見合った成果を得るまでには至っておらず、完全養殖の技術が養鰻の現場に普及できていない状況にある。シラスウナギの市場取引価格は高額(平均で30万円/kgといったところ)であることから,シラスウナギ漁は全世界の各地で盛んに行われている。なお、養鰻では餌を大量にやり水温も高めに設定したビニールハウスで行われることが多く、早ければ1年以内に,遅くても2~3年で出荷できるようになるというが、天然個体の成長はもっと遅いと考えられており、産卵へ再び海へ降下するまでに4~8年を要するとされている。
溯上の能力は高いようで、堰やダム、水力発電所のタービンといった物理的に遡上が困難な障害がない限り、河川との繋がりのある水辺のどこでも見ることが可能である。時には地面を這って移動するところも観察されているほどだ。特に日本では環境アセスメントが全く行われていないが、水力発電所のタービンによるウナギの溯上中の致死率は相当なものであるという海外の研究報告がある。
本来ならば水田、溜池や湖沼へも進出することは珍しくなかったウナギであるが、この河川の分断化の度合いの指標生物としての役割も注目されている。この他、有害化学物質にも過敏という報告があり、海外では水質の指標生物としてヨーロッパウナギを用いている例も知られている。

ウナギを取り巻く諸問題について詳しい、下記の本を紹介しておく。
井田徹治. 2007. ウナギ 地球環境を語る魚. 岩波新書.
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