形態・特徴 | 体色は黒っぽい燻し銀。側線より上の背鰭棘条部中央下の横列鱗数は5.5枚以上で、側線鱗数は48~57枚とされる。若魚までは体側に数本の横帯が見られ、幼魚の各鰭は黄色っぽくなることもあり、時たまキチヌと間違われることもあるようだ。 |
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分布 | 北海道以南、琉球列島をのぞく日本各地。朝鮮半島南部、中国北中部、台湾。 |
生息環境 | 汽水域から水深50m以浅の沿岸域の藻場や岩礁、砂泥底といった広い範囲に生息する。小規模な群れを作り、移動をする個体と地着きの個体とが知られている。 |
食性 | 甲殻類、多毛類、軟体動物、海藻、小魚など幅広い食性を示す雑食性。釣りでスイカやミカン、メロンなどを餌に用いる地域もあるほど。 |
見分け方 | よく似ているキチヌとのもっとも確実な見分け方は、背鰭のつけ根から側線までの鱗の数を数えることである。キチヌは3.5枚で、クロダイは5.5枚以上の鱗が並んでいる。
数える場所は『背鰭棘条部中央下』(はいききょくじょうぶちゅうおうした)なのだが、これがわかりにくい。簡単にいうと「背鰭の前の方の硬いトゲが並んでいる、その真ん中あたり」ということで、この写真でいうと前から6本目のトゲが目安になる。 ほかに、日本国内にいるクロダイ属の魚たちも、この『背鰭棘条部中央下』の鱗の数が見分けるポイントになり、ミナミクロダイとオキナワチヌは4.5枚と、クロダイ、キチヌのちょうど真ん中になる。ただし、オキナワチヌは個体数が少ない。西表島にはナンヨウチヌがいて、これはキチヌと同じ3.5枚だが、体高が非常に高いのが特徴。 |
食味・料理 | 食味については毀誉褒貶、両極端になることもある魚。水質との関連を指摘されることもあり、一定の関連はあると思われるが、非常に水のきれいな場所で釣れたクロダイが、独特の匂いがすることもある。一方、まったくそういう匂いがなく、いつまでも記憶に残るほどおいしい刺身にあたることもある。旬(おいしい時期)は、冬と初夏という意見もあり、産卵をはさむ時期と考えれば、それも当てはまるかもしれない。 |
地方名 | 全国に広く分布している魚で、古くは固有の呼び名も多くあったことが想像されるが、昭和40年代以降の釣り雑誌をはじめとするメディアの普及で、「チヌ」のようなもともとは関西圏の呼び名が全国に広がっている印象がある。
江戸末期に生まれた幸田露伴が、江戸湾のクロダイ釣りを題材にして書いた小説『幻談』では、「カイズではなくケイズ(系図から)」と呼び名にこだわりを見せている。 【クロダイ】青森県青森市、茨城県、千葉県、静岡県沼津、石川県金沢市、クロデエ:千葉県 【クロダイ・チヌが混在】東京都、愛知県 【チヌ】三重県、京都府丹後、大阪府、和歌山県、兵庫県、岡山県笠岡市、広島県、福岡県、長崎県本土部・五島、大分県、宮崎県、鹿児島県本土部・屋久島・奄美大島 マチヌ:和歌山県 【チヌ・チンが混在】山口県、佐賀県玄海灘側、長崎県対馬市・壱岐島・西彼杵、鹿児島県、沖縄県 【チン】熊本県、宮崎県延岡市、鹿児島県喜界島、沖縄県知念 チンダイ:京都府丹後、島根県浜田市、山口県下関市、チンデエ:新潟県佐渡島、チンノイオ:鹿児島県屋久島 チングヮー:沖縄県 【クロダイ・チヌ・チンが混在】新潟県 【特に大型のもの】愛知県名古屋市(ヅナシ)、三重県(ツエ)、大阪府~和歌山県(年無し・大介(オオスケ)) 【幼魚】カイズ(茨城県ひたちなか市・大洗町、神奈川県、静岡県、和歌山県)、カキノハ(手のひらサイズ、静岡県焼津市)、チンダイ(15cm以下)、メイタ(山口県、長崎県五島)、メダカ(山口県) 【その他】カワダイ(青森県、秋田県男鹿市、富山県氷見市、石川県能登)、シノコダイ(山形県庄内)、テン(石川県珠洲市)、キャーズ(静岡県伊豆)、ズイ(愛知県名古屋市)、ツエ(三重県志摩~南伊勢)、ヘイズ(京都府丹後)、ケンダイ(山口県下関市)、ヒエ(長崎県対馬市) 【出世名として】山形県:シノコデ→ニセ→サンゼ→コデ→クロデ、山形県飛島:ギンダイ→クロデ 茨城県・千葉県:チンチン・カイズ→クロダイ 静岡県沼津市:チンチン→クロダイ 新潟県佐渡島:ガメチン→チンデエ 富山湾:チンコ→チンダイ 石川県能登:チン・チンタ→カワダイ 静岡県伊豆:カイズ→クロダイ 静岡県伊豆網代:カエズ→クロダイ 愛知県:チンタ→クロダイ・チヌ 三重県津市:シンコ(当歳)→ニサ(二歳?)、伊勢・鳥羽:カイズ(当歳)→シラ(二歳)→三年(三歳)→チヌ(四歳)→ツエ(50cm以上) 大阪~和歌山:ババタレ→カイズ→チヌ→年無し・大介(オオスケ)(50cm以上) 福岡県:メイタ→チヌ(40cm以上) 佐賀県玄界灘側:メイタ(50cm未満)??→チン(50cm以上)??→チヌ(60cm以上) 大分県:シバチン(手のひらサイズ)→チヌ 熊本県:シバチン→黒チン(25cm以上) 参考:https://gyomei.zukan.com/?p=1577393253 |
その他 | 汽水域や沿岸域に広く分布するため、人の生活圏に近い水辺で採れるタイ科魚類の代表であるだけに、釣りでの人気が物凄く高い。一つは、警戒心が高く簡単に釣ることができないとよく言われていることや、多様な釣り場が、釣法の多様化も生み出し、人気を高めているのだろう。
また、雌雄同体の両性魚であり、性転換を行うことが有名である。春に産卵する本種は体長10cmほどから性成熟し、大抵は1年目には雄として機能し、次の年には雌となして機能するようになることが知られている。但し、産卵生態についてはこれだけ身近な魚種であるにも関わらず、未だ不明な点が多い。 |
食味レビュー |
★★★☆☆
3.0
50件の評価
★★★★★
千葉の黒鯛・2016/06/21
千葉の内房、鹿島、外房でフカセをしていますが、2・3月は最高に旨い4月くらいから徐々に落ち始めます。夏場は個体により臭いのが混じります。
外房は比較的味が安定しています。
★★☆☆☆
Mr Boo・2020/03/27
55cmのお腹パンパンの年無しを活き締めの海水氷水で持ち帰り、一晩放置してから下処理をしてペーパーにくるみ冷蔵庫で2日保存してから調理。カマ、剥き身、卵は煮付けにして、身は皮付きで鹿の子作りと刺身にして食べました。
下処理をしっかりやればそれなりに美味しい魚です。
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