形態・特徴 | 背面はウグイス色からオリーブ色、腹面は銀白色を呈する。縄張りを持つ個体では、特に胸鰭基部後方の体側に黄色い斑紋が出るなど、鮮やかな体色になる。本種との亜種関係にあるリュウキュウアユとは、胸鰭軟条数、側線上部横列鱗数、側線下部横列鱗数が本種の方がそれぞれ多い。見た目もリュウキュウアユはアユに比べて全体的にずんぐりしており、背鰭も長く伸びているという違いがある。しかし、リュウキュウアユとは分布域が重複しないため、産地で簡単に区別することができる。 |
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分布 | 北海道西部以南から南九州までの日本各地。朝鮮半島~ベトナム北部、台湾(絶滅)。河川の上・中流域、清澄な湖、ダム湖などにすむ。 |
生息環境・生態 | 河川の下流域で生まれた仔魚は、海に流れ出て、早春あたりから始まる遡上期まで海域で過ごす。このとき、カタクチイワシなどのニシン目魚類の仔稚魚の群れに混在し、砂底の沿岸域を回遊している。早春から初夏にかけて、海から河川へ生息場を移し、河川の中流域、稀に上流域まで遡上する。琵琶湖のように陸封された個体群では、湖が海の役割を果たし、その流域へと遡上していくことになる。中流域まで遡上すると、岩盤や石礫のある環境に、縄張りアユでは定位し、群れアユでは回遊するようになる(その水域内でのアユの個体数が、多い場合、縄張りを張ることでかかるコストと縄張りを張って得られる餌の量が釣り合わなくなるため、競合せずに周囲の個体とで群れを形成し、群れアユとなる。縄張りを張って得られる利益が多いようであれば、縄張りアユとなることが知られている)。産卵は晩夏から初冬にかけての夜間に行われる。このとき、上・中流域から下流域へ下るため、この時期のアユは「落ちアユ」と呼ばれることもある。この産卵を終えると死滅してしまう年魚であることも有名である。 |
食性 | 藻類食性であることが有名で、岩盤や石礫の付着藻類を主食とする。しかし、台風のあとや日照り続きの際には、餌の藻類が不足し、その際には水生昆虫も食べることがあるのは意外と知られていない。また、カタクチイワシなどと混合群を形成している仔稚魚期は、動物プランクトンなどを食べるほか共食いもしているという話がある。この仔稚魚期の記憶が残っているのかは定かではないが、河川でも釣り餌に生シラスを用いて釣ることのできる地域もあるという。 |
食味・料理 | 小鮎の飴煮(滋賀県)、ウルカ茄子和え(島根県益田市) |
地方名 | アイ(青森県南部地方、群馬県、富山県入善町、静岡県、三重県尾鷲市・南伊勢町、京都府北部由良川、滋賀県犬上郡、和歌山県、高知県、熊本県水俣市・芦北町)、アイコ(青森県)、サンビアユ(落鮎、青森県)、アイギョウ(山口県柳井市)、ヤー(新潟県佐渡南部)、ヒオ(氷魚、滋賀県琵琶湖、稚魚のこと)、チョウセンバヤ(福岡県)、ナタアユ(超大型、三重県亀山市太森町)、カラス(秋の黒くなったもの、三重県鈴鹿市) |
その他 | 水産上重要種であり、移植放流も全国各地で盛んに行われている。しかし、琵琶湖産アユなど他個体群の放流による遺伝的多様性の低下や冷水病といった魚病の蔓延などの問題を孕んでおり、安易な放流事業は批判されている。初夏の風物詩であり、俳句・短歌の季語として昔から用いられているほど古来より日本人に馴染み深い魚である。アユとは漢字で「鮎」と書くのが一般的であろうが、「年魚」や「香魚」とも書くことがある。「年魚」は、一年で一生涯を終えることに由来する。また、「香魚」は、アユは独特な胡瓜や西瓜に似たような香りを持つことに由来しており、アユの多い河川では河川敷にいるだけでその香りが漂ってくることもあるという。 |
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