カワヤツメ

Lethenteron camtschaticum (Tilesius, 1811)

形態・特徴 口は丸い吸盤状で顎がない。原始的な魚類とされることもあるが、研究者によっては魚類の仲間とみなさない人も多くいる。ヤツメウナギ目魚類は、その名前の通り、成体の眼が片側の側面に8個並ぶように見えることから付けられている。しかし、実際には他の魚類と同じように眼は片側に1個ずつしかなく、残りはすべて鰓孔である。胸鰭と腹鰭はなく、背鰭から尾鰭、臀鰭が繋がっている。また、ヤツメウナギ目魚類の幼生はアンモシーテス幼生と呼ばれ、眼が皮下に埋没し、口の吸盤もない。
本種は、第2背鰭の縁辺や尾部が黒色を呈すこと、鰓孔直後から肛門までの筋節数は68~77であること、上口歯板上と下口歯板上の歯が鋭いことで他種と区別される。降海時の若魚は体色が銀毛化することによって、銀白色になる。成体は大型になり、50cm程度にまでなる。
分布 山口県・千葉県以北。~スカンジナビア半島東部~朝鮮半島、アラスカ。
生息環境 アンモシーテス幼生時は、スナヤツメ種群などの近縁種と同所的に、止水域の砂泥底に潜って生息している。成体へ変態すると、海へ下る。海における生態はよくわかっていないが、サクラマスなどの大型遊泳魚類に寄生していると考えられている。
産卵は降海して数年後に河川で行う。夏~秋にかけて海から溯上し、越冬して、雪解け水がおさまった後に産卵して、一生を終える。
海に降りない河川残留型の存在も報告されている。
食性 幼生期はデトリタスや藻類を食べる。成体になると、海へ下り、海では他魚の血を吸う寄生生活が報告されているほか、小型魚を捕食することもあるという。海から河川へ溯上した成体は、餌をとらない。
その他 海から産卵溯上してくる本種を、ウケで漁獲し、それを生業にしていた人もいるが、近年、漁獲量が激減している。資源量が激減した理由としては、ダムや堰堤などの河川横断構造物の建設による海との連結性の低下と、アンモシーテス幼生の生息適地が護岸工事や河川の直線化などによって喪失したことにあると推測されている。環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されているほか、各自治体のレッドリストでも絶滅危惧種に指定されていることが多い。
蒲焼きや、串焼き、燻製、干物などで賞味され、その味は、分類群が異なるもののウナギと似たような香りがする。また、肝臓はビタミンAを多く含み、肝油とされるほか、干物は漢方薬として利用されていることもある。

なお、本種に長らく用いられてきたLethenteron japonicumという学名は現在の学名のシノニムであり、先に与えられたLethenteron camtschaticumが学名としては有効である。
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